「聖☆おにいさん」は断然イエス派、学生時代はキリスト教の教えを説かれながらここまで成長してきたが、本当のところは仏教の話が好きである。
まだまだ学んでいる最中なので迂闊なことは申し上げられないが、自我の権化である私には
「自我なんて捨てちまえ」
という教えが心に響く。
私が日々拝読しているグルメブログの主「ぱぉんちゃん」さんも写経に行かれたとのことだったので、これは私もぜひ、ということで写経に勤しんできた。
ぱぉんちゃん犬山市「寂光院」へ写経をしに行く - ぱぉんちゃんの食いまくり - Yahoo!ブログ
※こちらのブログ、大阪・名古屋のグルメネタがたっぷり。いつか行ってみたいお店ばかりです。
■環境
毎月1度、写経会が開かれているという都内某お寺。
事前の参加申し込み不要とのことで、ふらりと参加してきた。
当日の流れは
1)お坊さんのお話 30分くらい
2)写経
というシンプルプログラムである。
会場となっている大広間には50席程度の机と椅子が用意されており、定刻10分前には8割方、席が埋まっていた。
前方の席しか空いていなかったので、初参加にして最前列に陣取る。
てっきり正座を求められるものと思ってゆるゆるズボンを着用したのだが、杞憂に終わってしまった。
各机には既に写経セット一式が用意されている。
般若心経を書き写していくようだ。
うつし絵方式での写経ということで安心しつつも、ボトル墨汁ではなく墨&スズリなので緊張する。
席はどんどん埋まっていき、ずっと不在だった隣の空席にも、若い男性が腰かけた。
彼はもう常連なのだろうか。
前方は舞台状になっており、大きな観音様が鎮座していらっしゃった。
仏像方面には明るくないし、観光で寺を訪れても、立っているのがしんどいのでサッサと帰ってしまうのだが、腰をかけて拝顔できるのはなかなか良いものだ。
知らずのうちに心穏やかになってくる。
■写経にいたるまで
会場は満員となり、住職のお話がはじまった。
大変チャーミングなお坊さんで、説法といえども聞きやすく、わかりやすく、30分間はあっという間。
されど、隣席(すなわち最前列)のマダムは大いに眠りこけていた。
そう、主婦は忙しいのである。
説法が終わるといよいよ写経だが、その前に「写経勤行儀」なる開会式的なものがある。
さらに、身を清めるため「塗香(ずこう)」なる薄茶色の粉のお香が配布された。
中指に少量取り、手に擦り込むようにとのこと。
そうは言われたもののどうしたらよいかわからず、生まれて初めてお焼香をしたときのことを思い出したのだった。
列に並び、ソワソワしながら前方の「NOW 焼香ING」の人々を見つめ続け、ハハァ、やや低めの位置で焼香スリスリをしたほうが格好いいぞ、とか、やたらお辞儀するのはジジくさいかなとか、とにかくいろんなことを思っているとあっという間に自分の番で、先輩たちの背中から学んだことなどすべて忘れて、我流焼香をしてしまったものである。
初の塗香(ずこう)も無駄に緊張してしまい、隣席の若い男性に声をかけてしまう。
「中指でしたっけね、ハハ」
「いや、ちょっと僕も初めてなもので・・・」
おお、写経バージンの友だったとは、心強い。
とりあえず2人して「こんな感じですかねえ、あ、いいにおい」とかなんとか言いながら、手をスリスリしたのだが、こんなことで我が手は清まったのだろうか。
そしていよいよ、写経開会宣言である。
■寺でコンサート気分
既に各席に配布されている「写経勤行儀」の紙。
こちらに書かれているお経を住職が読み始めたかと思えば、彼に続いてオーディエンスもお経を唱えだしたのである。
ぎょっとしながらも耳を済ませ、お経の紙を目で追うと、
行の中盤に「同音」と書かれており、この上は住職のみ、この下はみんなで唱えるというルールになっていることがわかった。
コール・アンド・レスポンス。「同音」はすなわち、「セイ!」。
コンサートで手拍子を打つことにも照れる私であるが、観音様の前で恥もへったくれもない。
自我を捨てよ、照れを捨てよ、全身全霊でレスポンスである。
儀式第1パートが終わると、いよいよ般若心経に入る。
いわばメインパート。
コンサートにおいて、アーティストは超有名曲に入ると冒頭のワンフレーズだけ歌って、あとはひたすらマイクを天高く掲げるではないか。
それでもって、手を耳元にやって、うんうんうなずいたりして、私の脳裏には浜崎あゆみの姿しかないのだが、そんなかんじのパートである。
「摩訶般若波羅蜜多心経」
住職がそう唱えたのち、すべてを全員で発声するのだが、これがなかなかテクニックを要する。
誰に聞いたわけでもなく、その場で感じたルールなので間違いであればご指摘いただきたいが、漢字1文字=4分音符、であると判断した。
従って、2行目の「観自在菩薩」は
「かん」「じー」「ざい」「ぼー」「さつ」
となる。
例外は、タイトル部分の曲線である。
この部分(“摩訶”のところ)は上記ルールに基づくと
「まー」「かー」
というように4分音符が2回続くはずだが、この曲線でつながれた言葉は「2つをまとめて4分音符」ということになるようで、
「まか」
と読むことになる。
読めない漢字に苦戦しながら、ふりがなと上記ルールに沿ってひたすらにレスポンスを続けた。
心なしか、観音様が浜崎あゆみの如く、リズムに乗って頷いてくれているようにも見える。
私はいま、evolutionする。
ひと通り唱え終わり、いよいよ写経の段。
そしてそれはまた明日の【後編】にて。
般若波羅蜜多、わたしゃ腹へった。