言いたいことやまやまです

自意識過剰なアラサーOLの言いたくても言えないこといろいろ(食ネタ多めで)。

Authur:やまま (id:yamama48)
1985年生まれの銀座OLです。揚げ物・おから・喫茶アメリカンが好きです。ぐるなびさんの「みんなのごはん」でたまに記事書かせていただいています。 食に限らず体験レポート系記事作成のお問い合わせは下記アドレス宛にお願いいたします。

日本酒店店長のコミックエッセイ『日本酒に恋して』でお酒がもっとおいしくなる

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こんばんは、日本酒の時間です。

恵比寿にある日本酒のお店「GEM by moto」の店長・千葉麻理絵さんのコミックエッセイ『日本酒に恋して』を読みました。

麻理絵さんが日本酒のお仕事を始めたばかりのころの苦労話から、現在にいたるまでのお仕事話を通じて、「基礎知識」「造り手の想いと酒の個性」「自由な楽しみ方」を知ることができます。

数々の新年会を控えたいま、読んでよかった!日本酒をいただくのが楽しみでなりません。

 

マンガだからこそ、日本酒の基本が頭に入る

「日本酒は飲む順番が大切です。まず肴を食べてから日本酒が基本です。」

「「辛口」ってよく耳にしますが、この言葉は業界用語です。カレーや担々麺みたいな香辛料の辛さとは違います。」

 ……などなど、マンガを楽しんでいるうちに、聞くに聞けなかった日本酒の基礎知識を自然と知ることができるのがうれしいところ。

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こんな図解もありがたい!

「あらばしり」というラベルが貼られたお酒をいただいたことはあっても、それがどういう意味か、恥ずかしながらよくわからずに飲んでいました。その場で質問したことがあったはずなのに覚えていないのは、酔っ払っていたせいか……?

否、「日本酒づくり」がイメージできていなかったからだと思うのです。

雑誌や日本酒ムック本などで製造過程の説明を見かけることもありますが、写真で事実をありのまま伝えられるより、イラストで簡略化されたイメージを見せてもらえたほうがピンときました。

日本酒に興味を持つための「とっかかりの1冊」としてもおすすめです。

造り手の想いと酒の個性を知ることができる

麻理絵さんのお仕事を通じて、酒蔵、酒販店、飲食店、専門家の方々の姿を垣間見ることができるのも、とてもたのしい。お酒を生み出している酒蔵の方々のエピソードは特におもしろいのです。

たとえば、「貴」を造っている永山貴博さんとの出会い。

試飲会で初対面した永山さんは、人懐こく情報量豊富な「変わった人」として描かれています。興味を持ち蔵見学(山口県・永山本家酒造場)に行った麻里絵さんは、お酒を試飲し、「意外!!」と言いながら心のなかでこう感想を述べています。

変わった人が造るのだからさぞや変わったお酒があるのかと思っていたら、シンプルだけど芯がある、素朴で派手じゃない美味しいお酒だ。

そこに永山さんがひと言、「うちは特級の食中酒を目指しているからね」

このストーリーを読む前と後とでは、「貴」をいただくときの気持ちが違う。造り手の狙い・想いを知ってからいただくと、よりおいしく感じる気がします。

グルメな方々や感性の鋭いかたは、そんなことを知らずとも「貴は最高の食中酒だ!」とわかるのでしょう。でも、私はあいにく舌のつくりが雑です。なんでもかんでもおいしい、おいしいといただいてしまう。説明されて初めて「なるほど、言われてみればそういう味がする」なんてバカ丸出しの感想が出てきてしまう。

「以心伝心」の美学がある日本において、私のようなやつは劣等生です。いろんな人にため息を吐かれたって仕方がありません。でも、「わからない奴は日本酒を飲む資格なし」なのでしょうか?

もともと「おいしい」と思っていたお酒の生い立ち、込められた想いを知って、背景によってお酒をよりおいしく感じる。変に卑屈になったりせず、目の前の幸せな味わいに浸ればいいんじゃないかと思いました。

「日本酒を飲むことは飲むけど、実はあまり銘柄などわからなくて……」という方にこそ、ぜひ読んでほしい!

個性豊かな日本酒紹介コーナー

コミックエッセイの間に「酒・店・人」というコーナーが挟まれており、そこでは麻里絵さん視点での人物紹介、日本酒紹介文を読むことができます。

ムック本などで読むことが出来る日本酒ガイドは、紹介文がとてもフラット。第三者視点で冷静に解説されているぶん、それぞれの個性が記憶に残りにくい気もします。一方こちらは、思いっきり麻里絵さん視点。お酒と造り手のユニークさがダイレクトに響いてきます。

ガイドを拝読した上でいちばん飲みたくなっているのが「陸奥八仙」。紹介文を一部引用します。

一見、完璧で非の打ち所がない美しい味わいです。
彼(杜氏の駒井伸介(のぶゆき)さん)はクールで、いつも冷静な感じの人間に見えるのですが実際は、人間臭くて日本酒に対してとてもとても熱いんです。
冷静さを装っていても「美味しい!」と言うと、たまらず少年のような笑みをこぼし喜ぶ杜氏の顔を思い浮かべながら飲んでいただけたらと思います(笑)。

まるでランナーを紹介する増田明美のようではありませんか。この紹介文を読んで陸奥八仙に興味を持たない女性はいないのではないかと思えてくるほど!

お店で見かけることの多い有名どころばかりでなく、個性的なお酒にもスポットを当てているのが興味深い。島根の「寛文の雫」というお酒はぜひいただいてみたくなりました。下記の引用文をご覧いただけば、きっと共感していただけるはずです。

江戸時代の文献を参考にして、当時の日本酒を忠実に再現したお酒です。
蜜のようなトロッとした質感と茶色い見た目のインパクト、漂ってくる「みたらし団子」のお醤油を焦がしたような香りに圧倒されました。

熟成酒、古酒、決して一般的に飲みやすいとは言えないお酒を変態酒として一言で終わらせるのではなく、一度咀嚼してカジュアルで身近な飲み方まで落とし込みたい…。

ひとつのものとして捉えると難しいのですが、何かと合わせたときの組合せで補い合う、はたまたそれを上回る別の味わいに昇華出来るお酒があります。

”寛文の雫”は「調味料」として捉えようと考えた瞬間に迷いがなくなりました。

日本酒は「楽しいもの」!

麻里絵さんはとにかく日本酒ラブな理系女性で、とても研究熱心。これまでに聞いたことがない方法で日本酒をアレンジし、酒蔵、酒販店の方々から預かっているお酒の可能性を何倍にも広げています。

たとえば、蔵元見学で見た「瓶燗火入れ」の最中「お酒は急速に冷やすと美味しくなる」と聞いたことをヒントに、自分のお店でもその手法を取り入れてしまったり。

お客さんの求める味わいを主観ではなく客観的に分析し、最適なお酒を提供するためにお酒の中の成分(酢酸イソアミル、カプロン酸エチル……私には全然わからん)を勉強。そして日本酒にない味覚要素をスパイスなどで補う、ブレンド&ちょい足しスタイルを堂々とやってのけたり。

巻末のいとうあさこさんとの対談では、あさこさんの「日本酒はロックで飲むのが好き」にも共感されていました。

お店の方が率先して自由な楽しみ方を提唱してくれると、一般人の我々も「肩肘張らずに気軽に楽しんでいいんだな」と思えてきます。身構えて味わうものから、カジュアルで身近な存在に。それはまるで、ドリンクバーでメロンソーダとアンバサを混ぜるが如し……。

飲みたくなる!会いたくなる!まるで日本酒版『孤独のグルメ』!?

読み終えるころには、登場したお酒を欲し、麻里絵さんを筆頭に登場人物である皆さんに会いに行きたくなっている私がいました。

これを「孤独のグルメ効果」と呼ぶことにしたい。

ドラマ版「孤独のグルメ」は、放送後、ファンの聖地巡礼でお店が大混雑すると聞きます。やはり「実在する」となると、ドラマで感情移入してしまったぶん「本物を見たい、食べてみたい」という好奇心が湧いてくるのは自然なこと。これが孤独のグルメ効果です。

『日本酒に恋して』に登場するのは、実在するお酒と人ばかり。マンガに出てくるお客さんたちのように、麻里絵さんに「メロンみたいなお酒ください」と言ってみたい!クセがすごい杜氏さんの本物に会ってみたい!麻里絵さんとコラボレーションしておもしろお酒イベントを開催したお寿司屋さんに行ってみたい!

明日からの日本酒ライフが楽しくなる1冊でした。

そして、麻里絵さんが日本酒に向き合う姿を追っているうちに、自分の仕事について考えさせられる側面も。蔵元、酒販店、飲食店など、日本酒に関わる方々との連携プレーっぷりは見ていてとても気持ちがいいのです。よりよい日本酒をつくってこう、広めていこうという想いを持つもの同士がつながり、語り合い、チャレンジする様子は羨ましくもありました。

私もそういう仕事ができるようになりたい。「やらねばならぬ仕事」ではなく、もっと前向きで、引力があるような仕事。一生懸命にやっていると誰かが喜んでくれるような仕事。

1年のはじめに拝読し、心地よい気合いも入りました。

数々の新年会を控えたいまこそ、ぜひ!

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