銀座エリアでしばしば見かける居酒屋チェーン「天狗」。ランチタイムも営業していて、定食がとにかく安い。唐揚げ定食なんて500円!
時間調整をしたく、どこかカフェに入り直すことなく安く昼食済ませたかった私には、ポスター最下部の「挽き立てコーヒー 194円」の文字が輝いて見えた。いままで全くノーマークだった天狗、せっかくなので初入店だ。
13時はとうに過ぎていたが、店内は盛況だった。カウンター席に通され、「日替わりランチ」の正体を確認することなく、「チキン南蛮定食(600円)」をオーダーする。パンチの効いたものが食べたくてたまらなかった。念のため「ごはんなしで」。
そのすぐあとに、隣のカウンター席に初老の男性客がやって来た。
「ごはん大盛りとか、お味噌汁のおかわりとか、なんでも言ってくださいね!できる限りのことはやりますから!」
そう声をかける、パートタイマーの快活なオバチャン。なんと気持ちの良いことか。
正直なところ、「天狗」に全然期待などせずに入店した。とりあえず長めの時間、居場所を与えてくれればそれでいいと思っていた。それがどうだ、このおもてなし。チェーン店だろうがなんだろうが、こうした出来事ひとつで居心地って変わるよなあ。人気店だからって偉そうにしているレストランなんかよりも、いま、天狗の方がずっと居心地いい。
ふと、目の前に視線を送る。夜のメニューは基本的に置きっぱなしのようだ。ぱらぱらとめくってみれば、なかなかおいしそう。なるほど、こうやって夜のお客さんを増やそうという魂胆ね!やるなあ、天狗!
もう、いま、天狗に対して褒めポイントしか見つけられなくなっている。天狗株急上昇。
これが天狗のチキン南蛮だ
ややあって、目の前に届いたチキン南蛮定食(ごはんなし)がこちら。
写真越しにどう見えているかはわからないが、実物と対面した私は、割とがっかりした。600円の定食に何を期待しているのかと言われたらそれまでだが。
お味噌汁は具なしタイプ。
チキン南蛮。全体的に「元気がない」一皿だなと思った。おいしい食事が醸し出す「活き活き感」が感じられないのだ。
添えられているキャベツにはドレッシング(?)がかかっているし、キャベツの下にはしっかりとチキン南蛮汁が。ごはんを失うことが、そのまま「味の薄い食材がなくなる」ことを指していたとは……。
味のついたものまみれだと辛いので、「大盛りキャベツ(100円)」を追加オーダー。
ごはんがない分、こうやってキャベツとともにチキン南蛮をいただく。
衣を食べているのかチキンを食べているのかわからない瞬間にも遭遇(上写真)。
見た目も、味も、輝いていない印象。そりゃ、600円というとんでもない安さを思えばワガママなんて言えないのだけど……。
チキン南蛮を食べ終えた大皿に、追加発注しておいたキャベツの千切りを全投下。ぐちゃぐちゃにしながら食べるのが唯一の感動タイムだったかもしれない。
コーヒー、おいしかったです。
お店を出ると、天狗が入居しているショッピングセンターの優しいBGMが聞こえてきた。近所のスーパーマーケットとかで流れがちな、邦楽のインストゥルメンタル。うん、この曲知ってるぞ…と思いながら、心のなかで歌ってみる。
そして、
輝く、
ウルトラソウル!
急上昇していた天狗株は、もとある場所におさまりました。とはいえやっぱり安いなあ。ごちそうさまでした。