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言いたいことやまやまです

自意識過剰な三十路OLの言いたくても言えないこといろいろ(食ネタ多めで)。

2月13日(土)渋谷らくごレビュー(春風亭昇々、昔昔亭A太郎、立川志ら乃、瀧川鯉八)

レビュー レビュー-落語

 1月からアニメ「昭和元禄落語心中」が始まり、TVラジオ雑誌WEB、各種メディアを通じて、落語が盛り上がっていることを感じる。

仕事でお世話になっている方にちらりと「落語を観に行ってみませんか」と話したら、二つ返事で「ぜひ」との回答をいただいた。
落語鑑賞超初心者だった私が、大切な方を落語会にお誘いするだなんて。なんだか変な気分だ。
鑑賞後の高揚感を、自分の中だけにとどめなくていい・・・思うとわくわくする。

お誘いしたのはアラサー女性おふたり。

本当に一度も落語を観たことがない、とのことだったので、ここはやはり「渋谷らくご」

目次

 

シブラク、大人気!

どの回に伺おうか・・・と悩んだ挙句、13日土曜、14時の回を選び抜いた。
出演されるのは、イケメン春風亭昇々さん、クールで奇妙な昔昔亭A太郎さん、まくらから心つかまれる立川志ら乃師匠、私もすっかり「鯉八ギャル」(って歳じゃなくて申し訳ないのですが)になってしまったほど、魅力たっぷりな瀧川鯉八さん。
マンガ・アニメが大好きな同世代女史2名が楽しめないはずがない、と確信して1週間前くらいにチケット予約を済ませていた。

会場に向かう途中、予約していたチケットをコンビニで発券したところ、整理番号が40番前後でびっくり。
これまで、予約をすればたいがい1ケタ台~10番台くらいの番号だったのに、40って。

落語が、そのなかでも特に初心者歓迎を謳う「渋谷らくご」が注目されているかを実感。ご出演される面々が人気者ばかりであることも、この整理番号に至った大きな要因だろう。


春風亭昇々さん「明烏」

私が落語に心を開いたきっかけは、たぶん昇々さんなのだ。
高座に上がる同世代のイケメン。客席でうわあ、とときめいた。
狂気をも感じる迫力で語られる、へんてこりんな状況設定の新作落語に打ちのめされた。
「落語、身構えずとも楽しいじゃないか!」。
だからアラサー女史2名にも、絶対に昇々さんの高座を観てほしかったのだ。

この日演じられたのは新作ではなく、古典落語の「明烏(あけがらす)」。
女性が苦手でお堅すぎる若旦那を、人生勉強と言わんばかりに吉原に連れて行ってみる物語。
若旦那の付き添いを頼まれた町内の遊び人・源兵衛と太助はずいぶん苦労する。
正直に「吉原へ行きましょう」なんて言えば若旦那は嫌がるに違いないということで、お稲荷さんにお詣りに行くと(無理のある)嘘を吐いて、どうにか若旦那を連れていくのである。
とはいえ、さすがに無理がありすぎる。
しばらくしてから若旦那もついに、自分が吉原に連れてこられたことに気づいてしまう。
泣いて喚いて大変なのだが、最終的には美人の花魁と一夜を明かすほどに・・・(ニヤニヤ)。

古典落語でありながら、「昔のことば」に固執することなく、昇々さんならではのテンポと勢い、やっぱり狂気を感じる若旦那像で走りぬかれた印象。
物語が佳境に迫れば迫るほど、ぐんぐん見入ってしまった。

昇々さんの高座は、古典落語との距離をぐっと縮めてくれる感じがする。

とにかく、堅くて面倒くさい若旦那が最高だった。うざくて。
昇々さんが表現する「面倒くさい人物」は、面倒くささがへんてこりんな方向に誇張されていて毎回笑ってしまう。大好きだ。

アラサー女史2名は、高座で大暴れ(座布団から膝が飛び出しまくり)する昇々さんの姿を楽しそうに観ていた。
「落語を観るぞ」という気負いや緊張がほぐれたのではないかと思う。

2013年の春風亭昇々 SHUNPUTEI SHOSHO 2013 [DVD+CD]

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昔昔亭A太郎さん「不動坊」

A太郎さんの落語は、まだ見たことがなかった。

昨年末に会場限定で発売された「渋谷らくご一周年記念読本」で拝見した写真がすてきで、Podcastで聴いた声がすてきで、一刻も早く高座を見たい噺家さんのひとりだったのだ。やっと、念願かなった!
WEBサイトで宣材写真だけ見たことがある、大好きなラジオDJのトークライブに行くような心地。

ゆったりと座布団の上に座り、眼鏡をかけたかと思えばすぐ外し、それを客席にプレゼント。
・・・予想以上に、こちらがソワソワする!
昨年、渋谷らくごで「奇妙な二ツ目賞」を受賞した意味がわかった気がする。

薄く微笑みながら飄々と「ご縁は大切だ」といったまくらを経て、古典落語「不動坊」へ。

主人公の吉兵衛のもとに、かねてから気になっていた美人のお滝さんとの縁談話が持ち込まれる。
既婚者だったはずなのだが、ご主人の不動坊を亡くして、未亡人になってしまったというではないか。しかも、彼が残した借金まで背負って。
「そっかあ、死んじゃったかあ」とニヤニヤする吉兵衛、婚姻の条件が借金の肩代わりと知っても、「すぐにでも結婚したい」と浮かれモード。
風呂屋でお滝さんとのやり取りを妄想し、ひとり演技まで。
それを見ていた町内のお滝さんファンたち、破談させようと、噺家さんに不動坊の幽霊役を演じさせることに。
しかし演出にいろいろ失敗し(あんころ餅のくだり、荒唐無稽なのに高座を見るとなんだか笑ってしまう。A太郎さんの飄々ぶりとマッチしていたのかも!)吉兵衛は幽霊役にお金を渡して追い払おうとする。
「まだ浮かばれないのか?」「宙にぶら下がっています」

・・・というオチは、なるほど感が薄くてあまり好きではないなと思った。私の日本語理解力の乏しさもあるけれど・・・。
昔の人はどういう意図でつくったんだろう。

表情や声色を大きく変えずに淡々と噺を進めるA太郎さん。
クールだなあ、かっこいいなあ、と上手に戻っていく姿を目で見送るつもりが、最後のお辞儀から立ち上がるまでの所作が不自然すぎて「そうだ、奇妙な方なんだった」と思い出す。
1回だけじゃその奇妙さが掴めない、物足りない。またA太郎さんの高座が見たい。

立川志ら乃師匠「子ほめ」

渋谷らくごの紹介文によると、「昭和元禄落語心中をモチーフにした落語をつくり、声優の関智一さんを弟子にして、原作者の雲田はるこさんとタッグを組んで落語を盛り上げたりと幅広く活動」されているという志ら乃師匠。
「落語心中」ファンのアラサー女史2人には、ぜひとも志ら乃師匠の高座を見てほしかった。

初心者の私が初めて「まくら」で声を出して笑ったのは、志ら乃師匠のドリンクバーの話だったと思う(たぶんこれ、一生忘れない)。
落語をタレントさんに教えたときの珍事件など、この日もまくらから大爆笑。

話のテンポ、身振り、声の緩急、そしてその根底に流れているチャーミングさ・・・「いま、志ら乃師匠にもてなされている!」と感じずにはいられなかった。
こちらから萌えポイントを探さずとも、話を積極的に聞こうとせずとも、ぐんぐん楽しい時間がこちらに流れてくる、そんなかんじ。
真打ちとはこういうことなのか・・・。
同行してくれた女史2名も「志ら乃師匠の30分が、いちばん笑った」と、すっかり虜になってしまった様子。

そういえばこの日、私はちょっと変な位置に陣取っていた。

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かなり前の列、いちばん上手。高座姿を真横から見ることになる。

この位置から見たことで、志ら乃師匠の「美しさ」も知ってしまった。
最初のお辞儀ひとつとっても、流れるような所作が美しい。
演じられた古典落語「子ほめ」のなかでも、何気なく「おまえさんは・・・」と言いながら人差し指を出す、その手に都度うっとり。

「子ほめ」は落語初心者の私から見ても「ザ・落語」と呼びたくなる、おバカな主人公がひたすらボケまくる笑い話。

タダ酒を飲みたいという願望を満たすため、とにかく色んな人にお世辞を言うのだが、ご隠居があきれつつも教えてくれた世辞文句をひとつもうまく言うことができない。
親に向かって子どもをほめるのが有効だと教えてもらったので、赤ん坊が生まれたばかりの友人宅を無理やり訪れていざ実践。
「実に福々しい、こんなお子さんにあやかりたい」と言うはずが、年配者向けの世辞である「お若いですね」を口走ってしまう。
「1歳より若く見えるって、どういうことだよ!」「タダってことだよ」といったサゲであったはず。

こうした話は、つい「おバカな主人公」にイライラしてしまう。
私が青くて、「人間の業」を肯定できていないからだ・・・(つまらない見方してるよなあ・・・と思うのだけど、まだ受け入れ切れない・・・)。

でも、今日は違った。
志ら乃師匠の、息もつかせぬエンタテインメントぶりに見入ってしまった。
「いちいちおもしろい」というのが正直な感想。
しかも、おそらく世代を問わず笑える言葉や演出なのがすごい。

「おバカな主人公」じゃなく、「おもしろすぎるおバカな主人公」に笑わされっぱなしの幸せな時間だった。

うじうじ

うじうじ

 

 

瀧川鯉八さん「ミルクはいらない」

そしてそして、鯉八さん!

渋谷らくごの紹介文には、こんな記述があった。

鯉八さんの話芸に触れてしまうと、いままで生活してきた世界が再構築されるかのように見え方が変わってしまう。(中略)地方や、年配の人の多い場所では、まだ受け入れられないかもしれません、(中略)落語にはいままでなかった手法で、落語をアップデートし続けている、鯉八さんに目は釘付けになってしまうでしょう。

私はまんまと「釘付け」になってしまったひとりである。

Podcastで配信された「おはぎちゃん」の衝撃。
まろやかな声と語り口とよくわからない話に激萌えした。
すぐ渋谷らくごに行って、「生の鯉八さん」が演じる「やぶのなか」を観てため息をついた。「うわあ、大好きだ!」。
NHK新人落語大賞で披露された「俺ほめ」は、お風呂で思い出してにやにやしたくらい。
先月伺った吉笑さんとの公演「ニューラクゴパラダイス」で披露された「暴れ牛奇譚」のよくわからない感も、もやーっとした気分が心地よく、あーやっぱり鯉八さんが大好きだなあ、という感想に至ってしまうのだ。(薄い感想でスミマセン)

この日のトリを務めた鯉八さんが繰り出したのは「ミルクはいらない」という新作落語。そのタイトルをつけた理由がまったくわからない、奇想天外すぎる落語は、まくらもなくたっぷり30分。

魚の気持ちを考えたことがあるか?なんて話しだす還暦越えのおっさん(たぶん・・・あれ、実はおばさんだったのか?しばしば見かける”おじさんのようにもおばさんのようにも見えるが結局どっちなんだろう”というタイプの人だったのか?)たちの会話が始まったかと思うと、いつのまにか場面は「純喫茶 くさなぎ」へ。
たもっちゃんとボンペイ、いい女風のチエが「純喫茶の純とはなにか」という話をはじめ・・・たはずだったのだが、気づけば西部劇風のストーリーが展開される。
そこでミランダとディシャの30年越しの絆が描かれたと思えば、なんの結論もなく再び「純喫茶くさなぎ」での会話。
たもっちゃんたちは他の席にいる、会社の上司・部下の会話を盗み聞きしはじめる。
かと思うと視点の中心は別の席の客になり・・・

シーンや視点が変わるたびに、一瞬取り残される。
徐々に新しいシーンに慣れ、笑っているうちにまた取り残される。
どんどん変わる登場人物、ところどころで顔を出す変人奇人。
ノリも内容も全然違うけれど、映画『マルホランドドライブ』を観たときの感覚を思い出した。

状況設定がなされずボヤーッと話が進む中、「魚の気持ち」ステージでの「喉に小骨が刺さったら」の妄想話、「西部劇」ステージで、カフェの観音扉が「ターン!」と開くところなどなど、細かな話や描写が私たちの「そういうこと、あるある」の気持ちを突いて笑わせてくる。
ガハハと笑うんじゃなくて、ついニヤニヤしちゃう感じ。そういう笑いは大好きだ。たまらない。

初めて鯉八さんの高座を観たときの感想で「シュルレアリスム展を観てきました、みたいな余韻。」と書いたのだが、今回もやっぱり、そんなフワフワした不思議な気持ちに包まれた。

「なんでこんな話になったの?」「このオチってどういう意味?」と突き詰めて考えていくとまた面白いのかもしれないが、私は、前述の『マルホランドドライブ』然り、シュルレアリスム絵画然り、よくわからないものを「よくわからないもの」として楽しむのが好きだ(リンチファンに怒られるかな・・・)。
それをバカだとか、思考停止していると蔑む人もいるかもしれないが、楽しけりゃいいと思う。
(余談だが、以前エヴァンゲリオンファンの友人に「エヴァが描き、伝えようとしたかったことを私は何も理解できていない、薄い人間ですいません」と話したら「初号機かっけー!使徒のデザインすげー!で十分。おもしろいと感じるならそれが何より」と返されたことがあり、「ざっくり楽しむ」ことは悪ではないのだと知った)

また、鯉八さんの高座が観たい!
さすがにもうDVD、買わないと。

新世紀落語大全 瀧川鯉八 (DVD+CD)

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落語初体験の2人も満足してくれた

同行してくれた、落語初体験のアラサー女史2名。
「落語がこんなにおもしろいなんて!」と声を揃えて言ってもらえた。うれしい。
落語を堪能したあとは近所の居酒屋でアフタートーク。ハッピーアワーを楽しみまくる。

ひとりで楽しむ落語もいいけれど、連れだって鑑賞する落語もいいものだなあ。
いい休日だった!

eurolive.jp