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言いたいことやまやまです

自意識過剰な三十路OLの言いたくても言えないこといろいろ(食ネタ多めで)。

落語を「ときめき」で楽しむ(11月18日 渋谷らくごレビュー)

「人生初の落語鑑賞」な方から「落語なくして我が人生なし」なベテランさんまで、落語に興味を持つすべての人を受け入れてくれる落語定例会「渋谷らくご」。

※「渋谷らくご」についてはこちらをどうぞ

yamama48.hatenablog.com

 

1周年記念の11月公演。18日、20時からの回にお邪魔した。

「職人気質の4人」と称された出演者は、入船亭小辰さん、瀧川鯉八さん、春風亭正太郎さん、隅田川馬石師匠。
そしてトークゲストは神保町・らくごカフェ主宰の青木伸広さん。
公演前後に「渋谷らくご」のキュレーターであるサンキュータツオさんと青木さんの落語トークまで楽しめてしまう、贅沢な時間だった。

 

<目次>

 

「ときめき」を楽しめばいい

 何度か落語鑑賞に足を運んでいるが、「楽しい!また行きたい!」と思うようになったのはつい最近のこと。
会場まで足を運んで、木戸銭を払って、難しい顔をして古典落語を聴いている自分に違和感を持っていた。
古典落語のあらすじを覚えてから行かなきゃ、よくわからなかった昔の用語を調べておかなきゃ、昭和の名人の公演映像を見ておかなきゃ・・・という「落語鑑賞かくあるべし」という思い込みがあったのだ。

いや、でも待てよ・・・と過去を振り返り「大河ドラマ」に辿りついた。
新選組に全然興味がないのに、山南敬助を演じる堺雅人さん見たさに大河ドラマを観ていた、あの日々!『篤姫』だって、『龍馬伝』だって、そうだった。
「かっこいい俳優さんの立ち居振る舞いにキャーキャー興奮すること」が目的だったのであって、話に興味を持ったのは後からのこと。

・・・落語もそれでいいんじゃないか?

「渋谷らくご」は、Podcastでの「まくら」配信や事前の見どころ紹介など、「身構えずに受け取れる事前情報」がいっぱい。
情報を手に入れるたびに、頭の中で、噺家さんのイメージが膨らんでいく。
会場に行けば、目の前でホンモノが、生で、動いている!喋っている!ワアア!かわいい!かっこいい!

その気持ちを素直に楽しむことにしたら、それだけで落語会に行くことが楽しくなった。

それまでは「話がおもしろいかどうか」に囚われすぎていて、わからない自分ってだめだな、とふてくされていたのだ。
噺家さんの声や身振り、話の演出の仕方、そしてまくらを通じて垣間見えるパーソナリティや人間関係にキャーキャーすればいい。
こんなことを書くと噺家さんに失礼かもしれないけれど、私にとって彼らは「座ったまま会えるアイドル」。

そのことに気付いた先月を「接触篇」とするならば、今月は「発動篇」。
ときめき発動篇!

いかにときめいたか、18日20時からの「渋谷らくご」を振り返ってみたい。

入船亭小辰さん「金明竹」

らくごカフェの青木さんいわく、「端正な正統派」の噺家さん。

いざ登場、というところでスクリーンに映し出されたのは「瀧川 鯉八」の文字だった。
もちろんすぐに「入船亭 小辰」に直ったのだけれど、何事もなかったかのように登場した小辰さんは、挨拶を済ませるなり
「落語を続けてきて7年、自分の名が”瀧川鯉八”でないことはわかっています」
と真顔で話すからさっそく大笑い。

まくらで話されたのは、幼稚園や学校など、「落語が伝わらない」公演での思い出。
騒がしい園児の様子や、「小辰(こたつ)なのに、会場あったまってなくね?」と言ってのける女子高生まで、ころころと登場人物が変わる演技力に見入ってしまう。

それを受けての本編は「金明竹」。

コテコテの関西弁で話す仲買さんの話を聞き取れない、まさに「話が伝わらない」さまを面白おかしく描いた話。(ああ~まくらと本編がこうやってつながるのかあ!)
「寿限無」のような早口言葉(方言)を何度も繰り返すのだけど、小辰さんの声の聞きやすさといったら。

道具屋さん、奥さん、奉公にきている子ども、関西弁の仲買さん。
登場人物によって声色がガラッと変わる様も圧巻だった。
特にキュンとしてしまったのは、道具屋さんの奥さん。
仲買さんの話が聞き取れずオタオタする感じ、それをうまく主人に伝えられない、心許ない感じがかわいかったあ!
手の動きがしなやかで、女性らしくて・・・私にも教えてほしいくらいだ。

古典落語、まだまだわかりにくいこともあるけれど、小辰さんを介すると、難しい話もスーッと入ってきそう。

それにしても・・・落語協会のWEBサイトでプロフィールを拝見したら、入門年は2008年!私の社会人歴と同じとは!
同世代の方が努力を重ねている姿を生で観られるのも、渋谷らくごの魅力のひとつ。
私もがんばらないとなァ・・・。
凛とした話しぶりに、気合いを分けていただいた心地がする。

瀧川鯉八さん「やぶのなか」

今年のNHK新人落語大賞ファイナリストでもある鯉八さんは、この日いちばん会いたかった方。
Podcastで拝聴した新作落語「おはぎちゃん」の不思議な感覚が忘れられなかった。
シュルレアリスム展を観てきました、みたいな余韻。

爆笑するわけでもなし、明るい気持ちになるでもなし、いやむしろ皮肉めいた要素がところどころに混ざっていて、胸にサッと黒い影がよぎるような瞬間もある。
よくわからない。でもおもしろい。
「あはれ」じゃなくて「をかし」。
”funny” じゃなくて ”interesting”。

そして登場された鯉八さんは、穏やかに、ゆったり、もっちゃり(正太郎さん談)お話しされる姿がすごく愛らしかった。
「チャオ」だって!かわいいよ!わああ!

・・・でも、毒まみれ。

NHK新人落語大賞の帰り、結果に落ち込んでいた春風亭昇々さんを励まそうと差し出したお菓子が「ばかうけ」だった話なんて、もう最高だった(気の毒だけど)。
なのに愛らしいから、そんな話も笑って聞けてしまう。ずるい。

いま思い返せば、この時点でどっぷり術中に入っていたんだなあ。
催眠術では「あなたはだんだん眠くなーる」の前の「導入」がとても重要だと聞いたことがあるけれど、鯉八さんの「まくら」がそれだ。
たっぷりと間をとった語りで、会場を鯉八さんの世界に引きずり込んでしまう。
気づけば魔空間。

この日は、人のコミュニケーションの外ヅラと本心を描いた新作落語が披露された。

主人公の新婚女性とその夫、女性の弟とその彼女が登場し、かわるがわる独白するというスタイル。
登場人物同士は会話せず、共に過ごした時間を振り返りながら、本心を吐いていく。
「お好きにどうぞ」「気にしないでください」といったよくある言葉。
文字通り受け止めるか、言葉の裏を読むかで、その意味合いが変わってくる「コミュニケーションあるある」だ。
うーん、笑っちゃうけど笑えないぞ。

鯉八さんは座布団の上に座っているだけなのに、まるで舞台の朗読劇を観に来たかのような錯覚に陥ってしまった。
真っ暗な舞台のなか、独白する登場人物にだけスポットライトが当たっているような・・・。

落語鑑賞でこんな感覚に陥ることがあるとは、思いもしなかった。
高座を降りる鯉八さんを視線で追いかけながら、脱力。
どうやって噺を組み立てているんだろう、演出を加えているんだろう。
頭の中を覗き込みたくなる。

この感じ、どこかで味わったことがあるな、デジャヴかな・・・なんて思っていたら、中学生のころ、生まれて初めてラーメンズを観たときのことを思い出した。
「現代片桐概論」というネタを初めて観た後の気持ちに似ていたのだった。
あのときは、「教材用カタギリ」なるフィギュア役の片桐さんが始終静止したままという演出にびっくりしたんだった。
にぎやかなバラエティ番組ばかり観ていた私には、テンポやセリフ選びも衝撃的で。 

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うう、よくわからない。たまらない。もう1度見たい。そうだこの感覚だ。

私がラーメンズを思い出していた一方で、青木さんは鯉八さんをこんなふうに評されていた。

「落語というより瀧川鯉八というジャンルです。
ラーメン二郎を”ラーメンではなく二郎というジャンル”なんて言うけど、そういうことかな・・・」

それだ!!!(ラーメン、つながった!)
ああ、どうしてくれよう、もはやジロリアン。
いや、青木さんが言うところの「鯉八ガール」か。ガールって歳じゃないけども。
鯉八さんの落語、もっと観たいなあ。

春風亭正太郎さん「火焔太鼓」

青木さんが「明るくて、こちらがうれしくなるくらい楽しそうに演じてくれる」と紹介されていた正太郎さん。

披露してくださったのは、これまでにも何度か見たことがある噺だった。
なので初めて「噺家さんの演出の違い」を楽しむことができたのだけれど、ぶっちぎりで正太郎さんの「火焔太鼓」が好き!

見ているこちらが笑顔になってしまう、太陽のようなカラッとした満面の笑顔。
はつらつとしたハイテンポな語り口調。
この噺のおもしろさが何倍にも膨れ上がっていることをしっかりと実感した。

どこか自分に言い聞かせるようにしていた「落語は噺家さんの”演出ぶり”を楽しむもの」という考え方を、心身で理解できた感じ。
乗りこなせなかった自転車に、ふと乗れるようになってしまったときの気持ちに似ているかも。

正太郎さんの「火焔太鼓」は、とにかく、主人公の道具屋夫婦がかわいかった。
小突き合って、皮肉を言い合って、奥さんが強くて、でも奥さんはご主人が大好きで、ご主人も奥さんが大好き。
この夫婦と友だちになりたくなる。一緒にいるだけで元気がもらえそう。
近所に住んでいてほしい。あ、でも隣だとちょっと暑苦しいから斜前くらいでいいかな、みたいな軽口を言っても、夫婦そろってガハハと笑ってくれそうだ。

小汚い太鼓を殿様に売りに行き、あまりの汚さに怒りを買って罰を受けることになってしまうのでは・・・という妄想のシーンなんて最高だった。
畳みかけるような、奥さんの拷問妄想!テンポが良すぎて全然怖くない!愛がにじみ出てる!

そんな妄想とは裏腹に、太鼓が300両で売れたときの道具屋さんのうれしそうな顔といったら。
正太郎さんのお顔なのだけど、それは道具屋さんの顔なのだ。
高座に駆け寄って、背中叩きながら「よかったじゃーん!」と言いたくなるくらい。
それくらいかわいい。

300両を携えて帰ってきた道具屋さんを迎えた奥さんもまた、いいんだ!
「おまえさんが、好き!」
ああ~この夫婦かわいい、大好き、正太郎さんかわいい。
あれ、かわいいしか書いていない。

公演後のトークでのサンキュータツオさんのコメントでは「明るくて軽いけど、重みがある落語だった」とのこと。
観ていて元気をもらえたのは、ただ笑えるだけ、ではなかったからか!

・・・この章、思い出しているだけで頭のなかが元気になってしまったせいか、気付けばびっくりマークまみれである。

隅田川馬石師匠「甲府い」

待っておりました、馬石師匠。
前月の渋谷らくごで初めて拝見し、姿、声、演技、すべてにおいてすっかり虜になってしまったのだ。

高座に上がる際の、踏み台を一歩ずつ登っていく姿。
それだけで、ときめき最高潮。
心の中でキャーと黄色い声をあげている自分がわかる。

「(終演予定時間の)22時を、少し過ぎてしまうと思うんですけれど・・・」

いやいやもう、よろこんで。
グレーの着物に深緑の帯。すてきだなあ。あー、すてきだなあ。何度でも言いたい。

柔らかい声でゆったりと話し始めたのは「甲府い」という江戸の人情噺。
甲府育ちの善吉という主人公が上京して無一文になり、ひもじく倒れかけているところを、豆腐屋さんに助けてもらう。
それを機に善吉は豆腐屋に奉公するようになり、婿養子にもなって、豆腐屋を盛り立てていく、人と人との愛情が散りばめられた、あったかいお話だ。

馬石師匠の声は、余韻がふんわり丸い気がする。
「甲府い」との相性がまた抜群で、聴いていると、心がどんどん穏やかになっていくのがわかった。
ちょっと自分が気持ち悪くなるけれど、「ま行」と「な行」の余韻がとりわけ好き。
豆腐屋さんが「あのね」と言うたびに(な行だから)、ときめいちゃう。

そして、馬石師匠が演じる男性陣はとてもかわいいと思う。
女性にはない、男性ならではの子どもな部分、ピュアな部分。
ダメな奴なんだけど、憎めない愛らしさ。そんな魅力を持っている。
馬石師匠のファンでもあるけれど、師匠が演じる男性たちのファンでもあるんだな、わたし。

穏やかにときめきながら公演は終わり、その後は青木さんとサンキュータツオさんのトークコーナー。
公演前のトークでも、青木さんが馬石師匠のことを「THE 落語、という感じ。でもかわいいんですよね」と紹介されていて、そうなのよかわいいのよ、と胸の内で熱く同調していたのだけれど、公演後の
「高座姿がとにかくきれい」
「江戸時代に戻っても、人気が出る」
というコメントには、いまならヘドバンできる!というくらい「ほんとそうですよね!」と頷いた。

落語をしっかり聞くべきところ、「姿だけでときめく!すてき!ギャー!」だなんて、私ってホント低俗だなあとへこんでいる側面もあったのだけど、お2人のこのコメントで救われた気がする。
男性が見ていても「素敵」と思える噺家さんなんだ。

「(登場人物が)変なことを言われて、何も言わずにきょとんとしているときの馬石師匠の表情がたまらない」
なんてコメントまで!あああああ、それ、わかりすぎて辛い。
ときめきを言語化してくれてありがとうございます。

会場を出て、帰路について、床について目を閉じるまで、ずっとホッコリした気持ちが続いていた。その日はとにかく安眠熟睡。
こうやって穏やかに年を越したい!ということで、年末の馬石師匠の落語会の予約も済ませてしまった。楽しみだな。

12月もシブラクが、落語が、楽しみだ!

実はこの日、仕事の調子がいまいちだったり、前日(飲みすぎて)あまり寝ていなかったりと、低空飛行気味で会場に着陸していた。
まだまだ落語鑑賞に不慣れな我が身、眠くなっちゃったらどうしよう、なんていう不安もあった。
でもいざ始まってみれば、眠気ゼロ!
開演前の暗い気持ちはどこへやら、温かい気持ちで、しかも静かに興奮気味に会場を出ることになろうとは。

回を重ねるたび、ときめきが強くなっているのがわかる。
12月ももちろん渋谷らくごに足を運ぶし、初めて伺う落語会も予約済。
講談や浪曲なども鑑賞してみたいし、だんだん、かつての「名人」たちの音声や映像も楽しみになっていくかもしれない。

これからずっと、ときめき続けられるなんて!幸せ。
そのきっかけをくれた「渋谷らくご」、ずっと続いてほしいなあ。

今月からスタンプカードシステムまで導入され、ますます通うことが楽しみに。

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渋谷らくご開催1周年記念本もボリュームたっぷり。じっくり拝読したい。

トークコーナーで青木さんにもすっかり魅了されてしまったので、近日中に神保町の「らくごカフェ」にもぜひお邪魔したい次第。

来月も、その先も、落語が楽しみ!

 

昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)

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 ※アニメ化後、落語人気は爆発しちゃうんじゃなかろうか・・・