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言いたいことやまやまです

自意識過剰な三十路OLの言いたくても言えないこといろいろ(食ネタ多めで)。

【落語レポ】12月30日  馬石芝居がたり 〜隅田川馬石の「芝浜」を聞く会〜

レビュー-落語 レビュー

毎月楽しみにしている定例落語会「渋谷らくご」で大好きになってしまった、隅田川馬石師匠。

ビクター二八落語会 隅田川馬石「元犬」「崇徳院」「甲府い」~究極の音にこだわる落語シリーズ

ビクター二八落語会 隅田川馬石「元犬」「崇徳院」「甲府い」~究極の音にこだわる落語シリーズ

 

日本橋の「食堂ピッコロ」という小さなレストランで落語会が催されるとのことで、行ってきた。定員30名というこじんまりとした空間で、馬石師匠の噺を味わえるなんて最高だ。

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目次

この日の演目

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王子の狐

■話の流れ

陰で、狐が若い女に化けるところを目撃した男。
「せっかくだから、こっちが逆に騙してやろう」と自ら狐に声をかけ、一緒に料理屋へ。
散々酒を飲んで狐を酔っ払わせてしまう。
その間に自分はご馳走を平らげ、卵焼きのおみやげまで買い求め、支払いは女に化けて酔いつぶれてしまった狐まかせ。
目覚めた狐は支払いを求められて焦っているうちに狐の姿に戻ってしまい、命からがら逃げだした。
一方、男は「狐はお稲荷さんのお使いなんだから、謝ってこい」というアドバイスを受けていた。
それなら・・・ということで翌日、狐の元に謝罪に行く。
そこで遭遇したのは、昨日の狐の子ども。
お母さんに謝りたい、と伝言を頼むとともに、手土産のぼたもちを手渡した。
預かった子どもは母狐の元へ。
伝言を伝えながら手土産を開けたがると、母狐はこう制す。
「お待ち、馬の糞かもしれない」

 

■感想

馬石師匠が演じる、母狐が化けた「おたまちゃん」のかわいいこと!
これまで拝見した高座では、賢く穏やかな女性を演じられていることが多い印象だったけれど、人間にいたずらされてしまうような、抜けたところのある女性もまた、いいなあ。
特に、酔いが覚めて起きた時の、髪を押さえる仕草!

料理屋さんでの「え、油揚げがいいの?」「厚揚げ?」「どうもそこから離れないんだね・・・」なんてコミカルなやり取りも、見ごたえたっぷり。
そして、「おわん」をおいしそうにいただく様子にはこちらのお腹が鳴りそうになるほどだった。

噺自体はいまだにオチの意味がわかっておらず。
馬の糞って・・・?
仲入りで首を傾げていると、落語好きのおばあちゃん2人組からこんな声が。

「飲む人は絶対に身に覚えのある噺よね」
「よくできた噺よね」

そうなのか・・・理解できていない私、まだまだ落語鑑賞脳が開花していないんだろうなあ。

それにしても、主人公の男は料理屋から「あいつも狐だったんだ」と思われているわけだから、お店に行くことはおろか、当分あのあたりを歩くのは難しかったろうなあ。気の毒。でも自分のせいだしな。

噺の舞台にもなっている料理屋・扇屋さんの卵焼きは、絶対に食べたい卵焼きのひとつになった。
ちなみに、私には「一度は食べたい卵焼き」がもうひとつあって、それはアニー伊藤さんの「丸武の卵焼き」です。

www.ouji-ougiya.jp

www.tsukiji-marutake.com

 

芝浜

落語を聞き始める前から、その演目名だけは知っていた「芝浜」。
いつか聞いてみたいと思っていたこの噺を、大好きな馬石師匠を通じて楽しめるなんて、うれしい。

■噺の流れ

主人公の魚屋さんは、お酒を飲んで毎日ぐうたら。
いよいよ家計も苦しくなってきたということで、奥さんに激励され、再び働き始めることになった。
魚屋さんの朝は早い。真っ暗で寒いなか、愚痴を言いながら歩く魚屋さん。
魚河岸についたものの、奥さんが早く起こしてしまったようで、まだどこも開いていない。
仕方ないと煙草を飲んでいたら、足元に財布が落ちている。開けてみれば大量の金が!
慌てて持ち帰った。
「これで借金を返せばいい。当面ラクできる!酒だ!宴会だ!よし、俺は昼まで寝るぞ!」
ということで、前日余していた酒を飲みほして眠ってしまう。
しばらくして、再び奥さんに起こされる魚屋さん。
会話がかみ合わないので確認してみると、「宴会をした」のは事実だが、「大金を拾った」のは夢だということがわかってきた。
膨れ上がる借金!いよいよヤバイと焦った魚屋さんは、「もう3年は酒を飲まねえ」と誓い、生まれ変わったかのようにまじめに働き始めた。
もともと腕がよかったこともあり、売上は右肩上がり。
そして誓いの3年を経ての年末。
自分たちの店を開くのに十分なお金が貯まっていた。
そんななかで奥さんは、3年前の落し物の大金は夢ではなく実物で、本当はずっと隠していたことを白状し始める。
泣いて謝る奥さんに「むしろ礼を言いたいくらいだ」と応じる魚屋さん。
あれから3年経ったのだから、と労いの酒を勧められるも、「また夢になるといけねえ」と断るのだった。

■感想

演じる人次第で、噺の湿度はずいぶん変わるだろう。
初めて聞くので比較のしようがないが、馬石師匠は必要以上の湿り気を帯びさせず、淡々とお話しされるスタイルなのではないかと思った。
師匠の話し方や声は、まるくてやさしい(だから好き!)。
「泣かせる噺」というよりも「ほっこり、心温まる噺」として楽しめた。

定員30人という小さな空間だからこそ見える、目の演技。
最後の最後での夫婦のやりとり、奥さんを演じる馬石師匠の目が潤んでいるように見えて、ぐっときてしまった。
礼を言う魚屋さんの照れたような表情の裏に、奥さんへの絶大な信頼感が見える。
労いの酒を、ちょっとおどけて照れ隠しをしながら、飲もうか飲むまいか躊躇する人間味もたまらない。

そんな「ほっこり」の余韻は帰り道もずっと続いていて、あたたかい気持ちで年末を迎えられることは幸せだと思った。

噺自体も、とても好きだ。
なにより、奥さん像があまりに素敵だ。
落語に出てくる、旦那さん想いの奥さんは皆大好きなのだけど、「芝浜」、好きだなあ。
想い、想われの絆が心にじんわり沁みる。
そして、序盤での「人に言われる(=最初に奥さんに起こされて働きに行く)のと、自分で気づく(大金を拾ったのは夢だと思い込み、ヤバイと思って働きに行く)のとでは、やる気の度合いが違ってくる」というくだりには、「自分ごと化」の大事さを改めて感じ、年明けからちゃんと仕事しないとなァなんてことも思った。

はじめての地域寄席だったけど、じっくり楽しめた

落語を楽しいと思い始めてから約半年、今回のような会場に行くのは初めてで、ビギナーゆえに少々の不安もあった。
でも、臆する必要などひとつもなかった。
めいめい、想いのままに楽しめばいいというのは、どの会場でも同じことなんだとわかった。
この、「淡々とそれぞれ楽しむ」感じ、好き。
落語のいいところだな。

30人のお客さんがびっちりと入った食堂ピッコロさん。
テーブルをつなぎ合わせて作られた、手作り感のある高座。
あたたかい雰囲気に包まれていて、そしてなにより、「渋谷らくご」よりずっとずっと近くに噺家さんがいるということに興奮した。
目の演技までじっくり堪能できるのは、こうした会場ならではのことなんだろう。
(高座姿を遠くから見る、というのもいい。それぞれにいいところがあるんだと知った)

お着物も素敵だった!
1席目は、白っぽいグレーの置物で、半衿(というのか?襟元、内側のもの)がグリーンでおしゃれ。
黄色の手ぬぐいがパリッと目を引く。
仲入り後は淡い紺色の置物で、手ぬぐいも濃紺のものに。
仲入り前後で衣装チェンジがあることも知らなかった。

「渋谷らくご」ではあまりまくらに時間をかけない印象があった馬石師匠、ここではたっぷりといろんなお話を聞かせてくださった!
一門の忘年会でのやりとり、師匠に延々と「ランニングしていたら足が痛くなった」話をしたというエピソードのしょうもなさ、最高。
こういう話は、足を運ばなきゃ聞けない!

来年もいろんな会場に足を運び、好きな噺家さん、好きな噺を広げていきたいな。 

yamama48.hatenablog.com