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言いたいことやまやまです

自意識過剰な三十路OLの言いたくても言えないこといろいろ(食ネタ多めで)。

上司に連れられたい昼飯処!日本橋「いし井」

食事処‐日本橋・人形町・築地 食事処

 

昼、日本橋で仕事があった。

順当にいけば、会議は13時ごろに終わる予定。

ピークタイムを避けた時間帯にオフィスの外にいる、それだけで幸せになる。

ましてや日本橋。さあ、何を食べようか。

前日から、暇さえあればそのことばかり考えていた。

 

少し足を伸ばして、超ボリューム天丼でお馴染みの「金子半之助」はどうか。

いや、蒸し暑い夏空の下、行列に並ぶ力はない。

じゃあ、平日のみ営業の昔ながらの喫茶店「花時計」で、ごはん系パンケーキ。

いや、それじゃお腹が膨れないだろう。

それなら、豆腐が乗ったごはん「とうめし」が有名なおでん屋「お多幸」。

 

・・・それだ!

 

とうめしセットでは物足りなそうだから、おでんのついたセットにすればいい。

あと、お店の名前がいい。

幸せは多ければ多いほどいい。

 

・・・なんて、それっぽく書いたものの、どの店も行ったことはない。

私は決して、グルメではない。

人呼んで、さすらいの食いしん坊。

 

 

■初志貫徹か、運命の出会いか

日本橋高島屋から中央通りに出て、道を渡る。

通りに面して建っている郵便局を、あえて後ろから回り込むようにして、「お多幸」に向かうことにした。

食通気分で、それっぽいルートで店に向かいたかったのだ。バカである。

しかし、郵便局の裏側にひっそりと佇む細い路地は、そんな私の心を満たしてくれた。

 

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ご覧あれ、この風景。

道の右手には飲み屋がぽつぽつと並び、左手にはきれいな新しい建物がそびえ立つ。

どっぷりディープな感じがしないところが、現実的でよい。

 

真っ昼間から行灯に光が灯っている飲み屋が、2軒。

手前は季節料理の店、奥はふぐ料理の店だった。

 

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歩を進めると、手前にあった季節料理の店「いし井」は地下にあることがわかった。

定食メニューも、目立たぬ位置にひっそり掲げられている。

この路地と店をつなぐ導線は、こうこうと光る行灯のみだ。

 

・・・気になる。

 

この道を突っ切れば、すぐにお目当ての「お多幸」だが、うーん。

今日ここで出会ったのもなにかのご縁。

でも、前日の晩から「とうめし」と「おでん」を出迎える口になっていたのだ。

楽しみにしていただけに、この店に入ってハズレだと、

「ああ、やっぱ初志貫徹すべきであった」

などと後悔して自分を恨み、午後のテンションはガタ落ちするに違いない。

さあ、どうする、どうする。

 

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メニューをじっくり見てみれば、左端に「天丼」の文字。

なるほど、「金子半之助」を諦めた私への、神からの提案ではなかろうか。

「金子さん混んでるけどさ、天丼、食べたかったんならここで食べなよ」

聞こえる、フレンドリーな神の声!

 

よし決めた。おでん、サラバ。

私は天丼を求めて地下に潜る!

 

 

■背伸び客ゼロ!大人な店内

深めの階段を降りると、扉があるでもなく、すぐ店内だった。

カウンター6~7席、4人掛けテーブル3つ。狭くて、やや薄暗い。

13時過ぎという時間帯もあってか、先客は数名だった。

テーブルには、エプロン姿のおばさん2人組。

このあたりで働いている常連さんである様子が伺える。

カウンターには男性客が、ぽつりぽつり。

 

妙齢の女性店員さんに迎えられ、カウンターのいちばん端に陣取った。

目の前にも程があるだろうという距離で、板さん3名がきびきびと働いている様子、否、「手元」が見える。

 

アリーナ席ぶりに圧倒されていると、前述の店員さんに注文を尋ねられた。

もちろん気持ちは天丼、・・・だったのだが、隣の男性が召し上がっている魚の煮付けが実においしそう。

煮付けの煮汁と、白いごはん。最高だよなあ。

煮汁を纏った魚を、白米の上にポンポンと弾ませてから食べる。

魚もおいしいし、ポンポン後の、ほんのりと煮汁味がくっついたごはんも好き。

 

天丼は神からの提案だ、なんて思い込みながら入店したものの、魅力的な食べ物を目の前にしたら、もう、神そっちのけだ。

完全に煮付けを求めている。

よし、「煮付けのお魚はどれですか」と聞こう。せーの!

 

「さばと、カレイの煮付けが終わっちゃったんですが、いかがいたしましょう」

 

「煮付けの」と切り出すために口を横に開いていた私に突きつけられた、悲しい事実。

横に開いていた口を縦に開き直し、「そうですか」と、極めて冷静に反応した。

いやはや、そうか・・・こりゃやっぱり天丼かなあ。

 

「おすすめ、なんですか」

「そうですねえ・・・サーモン、銀だらなんて、いかがですか」

 

天丼は選択肢に入っていないのか。

それなら、ここではお魚をいただいたほうが楽しめそうだ。

サーモン気分ではなかったので、銀だらを注文。

店員さんが立ち去るより早く、目の前の板さんたちが銀だら塩焼定食の支度を始めたように見えた。

 

ふぅ、と一息。

入店直後から察した大人な空気に、緊張してちょっと疲れてしまった。

 

改めてくるっと店内を見回すと、みんなこのお店に馴染んでいた。

きっと常連さんばかりなのだ。

かといって、店員さんや板さんたちとダラダラ与太話をする様子はなかった。

板さんたちの仕事も静かで、キビキビ。

決して、「銀だら定食、はいよォ!」というノリではない。

私のあとにも、常連客と思われる男性が1名入ってきたが、板さんと視線を合わせ、互いに「あ、どうも」と一言交わす程度だ。

 

なんだか、大人な店だなァ・・・。

浮足立って、背伸びして、煮付けだ天丼だ銀だらだ、と注文に悩み、ソワソワしているのは私だけだ。

30歳のオフィースレイディってもっとカッコイイんじゃなかったのか。悲しくなる。

 

■「絶対」の定食

俯く私の目の前に、スッと現れたおしんこ。

注文するや否や、のタイミングである。

「早い!」と思ったのも束の間、ごはん、味噌汁が、それぞれ左の板さん、真ん中の板さんから差し出される。

 

さらに一拍おいて、右の板さんが

「銀だらです!」

と、魚の乗った皿を持った手を伸ばしてきた。

なんと見事な連携プレー。

 

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眼下には定食という名のパラダイスが広がった。

言いたいことも言えないこんな世の中がパラダイスに変わるまで、ものの5分もかかっていない。

おしんこ、白いごはん、味噌汁、焼き魚。

見るからにおいしそうな、「絶対」の定食だ。

 

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おしんこは、きゅうりと細切りたくあん、それからキャベツ。

きゅうりが分厚い。

キャベツは酸味がさっぱりとさわやかで、焼き魚定食を締めくくるにふさわしい味だ。

これは、温存しておかないと。

 

大きなおわんに入った味噌汁をズズズとすすれば、入っていたのはなんと茄子。

小さくカットされ、クタクタになっている茄子の食感がやさしい。

味付けはやや薄めか。

量の多さを思うと、薄味だからこそ、のお味噌汁であるように思う。

 

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そして、銀だら。

驚くほどプリプリだった。

焼き魚に対し、「ジューシー」という感想がこれほどまでにぴったりとハマる日が来るとは。

あまりのジューシーさに、最後は脂っこさのようなものを感じるほどだった。

それをさっぱりと中和させてくれるのが、細かく、細かく、すりおろされた大根おろし。

いわば「魚の肉汁」とおろしが口の中でぐしゃっとひとつになり、旨みとさわやかさが、ぐるぐると身体の中に入っていく。

うわあ、おいしい。

皮まで魚の旨みがたっぷり。

残してしまうなんて勿体なく、大根おろしをくるっと巻いて平らげた。

ただひとつ残念だったのは、ごはんが柔らかめの炊き方であったこと。

こればかりは好みの問題なので、仕方がないか。

 

 

■「昼、行くか」と言われて連れて来られたい店

注文から料理の提供まで、わずか5分ほど。

店内は本を読みながらくつろぐ雰囲気でもないし、スマートフォンをいじりながら、あの立派な銀だらをいただくのは無粋というもの。

ただひたすらに定食に向き合い、目の前の板さんたちの鮮やかな仕事ぶりを眺め、お茶をすすって、ごちそうさま。

30分くらいのことだった。

 

ごはんのお代わりもできそうだったが、それにはおかずが足りないので、1膳で終了。

お腹の容量的には満腹の2歩手前くらいだ。

 

魚のおいしさに目を見張った様子を書き綴っておきながら、恥ずかしいことに、私の口は「食べられるものはすべておいしい」という雑な感覚を持っている。

味のクオリティ以上に「安く満腹を得る」ことに重点を置いてしまう傾向があるのだ。悲しい。

となると、「満腹にならない1,080円の定食」には「ちょっと高かったかな」という印象がどうしても伴ってしまう。ガキだ。

 

ふとカウンターに並ぶ男性客を見ると、上司と部下の2人のようであった。

べらべら喋るでもなく、定食をじっくり味わいながら、お茶をすすりながら、一言、二言。

部下の彼、この定食をご馳走になるんだろうか。

 

私が部下だったら、こういうお店で上司がご馳走してくれたら、ものすごくうれしい。

「何食べたい?」とか聞かずに、こういう、魚がおいしい、大人な、職人の店に連れてきてもらったら、ちょっと惚れる。

ゆったりくつろげる、オープンテラスで広い椅子で、みたいな店が嫌いなわけではないが、忙しい平日の昼には、いささか誘惑の要素が多すぎる。

午後の仕事から逃げ出したくなってしまうのだ。

でもこの店は、いい意味でくつろげない。

働く板さんたちの姿を見ると、「午後もがんばらないとな」とちょっと気合が入る。

 

カウンターというのも、いい。

隣りあわせというのは、好きなフォーメーションだ。

互いの姿が真正面にあるよりも気を遣わないし、目を合わさずに話していても、身体の距離が近いぶん、親近感がある。

そして、食事ともしっかり向き合える。

 

そのうえ最後に「今日はいいよ、ご馳走するよ」なんて締めくくってもらえたら、言うことなしだ!

遠慮なく、ごちそうさまです。

 

・・・30歳にもなって「ご馳走してもらえたらラッキー」なんて思っているから、いつまでも青いんだろうな・・・。

ご馳走する方に、ならなければ。

こういうお店に連れてきたら、後輩クンたちは喜んでくれるんだろうか。

 

とにもかくにも、おいしかった。

あと、精進します。

 

※お店情報

http://tabelog.com/tokyo/A1302/A130202/13011465/