言いたいことやまやまです

自意識過剰なアラサーOLの言いたくても言えないこといろいろ(食ネタ多めで)。

自分を受け入れる強さをくれるエッセイ 『傷口から人生。』に励まされる

 

ゴールデンウィークを迎え、やっと読むことができた本がある。

その本は、書店で平積みにされている書籍のなかでも、ひときわ目立っていた。

愛☆まどんなさんが描いた、超可愛い女の子のイラスト。
でも、目立っていたのは表紙のイラストのせいだけではない。
同い年で、母校も同じ。そんな女性コラムニストのエッセイ本だったからだ。

 

『傷口から人生。』

 

つぶらな瞳の女の子の顔の上に、大きくそう書かれた書籍。
しばし表紙の彼女と見つめ合ったのち、立ち読みすることもなく、右手で上から2冊目を取り上げて、レジに向かった。2月のことだ。

帰宅後に数ページ読み、ため息をついて本棚に立たせてから今に至るまでの3ヶ月弱、その本を開くことはなかった。
導入部分だけで惹きこまれてしまったからだ。
それが悔しかった。

 


※本日の目次


■興味を抱かずにいられない『傷口から人生。』

■比べても仕方がない ― 大好きな一篇「魂の速度」

■「生きる勇気が湧いてくる、強烈自伝エッセイ」

 

 

■興味を抱かずにいられない『傷口から人生。』

文筆家、コラムニストとして活動している小野美由紀さんのエッセイ本で、サブタイトルは

 

「メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった」。

※メンヘラ=心的な病にかかった人のこと。(参考:日本語俗語辞書

 

慶應大学卒、TOEIC950点、留学経験に有名企業のインターン経験、さらにはボランティア活動の経験・・・そんな無敵の装備をまとって挑んだ就職活動のさなか、大事な面接の直前で、突如パニック障害を引き起こしてしまう。
それを機に、就職活動をやめざるを得なくなってしまった小野さんは、フランス南部からスペイン北西部にまで続くキリスト教の巡礼路「カミーノ・デ・サンティアゴ」を歩くことを決意する。

20日間をかけ、聖地までの500㎞もの距離を歩く「スペイン版お遍路さん」
ここでの出会い、経験談を通じて、小野さんの過去のエピソードが振り返られていく。


母親との確執、父親の不在といった家族問題。
自信がなくて、でも認められたくて、周囲に対して攻撃的になって引き起こした、対人関係のもめ事。
旅での体験を核に、自身の中にあるトゲを見つめ、受け入れるに至ったプロセスが丁寧に書き綴られている。

サブタイトルから推測されるような、目が覚めるようなエピソードもある。
長年恨み続けてきたお母さんに向けて、自らの血液をバケツに入れて机に置いておく、無言の嫌がらせ。
仮面浪人中に六本木のキャバ嬢として働いたときに出会った、お店の“女王”と“秘密の花園”。

 

そんなずっしりとした挿話も含め、彼女の根底に流れていたのは、「特別な存在でありたい」という想い。
形のない「みんな」という存在と肩を並べようと躍起になって、それだけでは飽き足らず、少しでも上の地位にいる特別な存在になろうとして、人を見下したり、悪態を吐いたりしながらもがく姿には、誰しも共感するポイントがあるはずだ。

 

 

■比べても仕方がない ― 大好きな一篇「魂の速度」

 

ゴールデンウィークを迎え、私は3ヶ月も眠らせてしまっていたこの本を再び取り出した。

ぐっと惹きこまれる本の魅力に抗い、読まずに置いておいたのは、ひとえに「悔しさ」ゆえ。

こんなことを書くのは恥さらし以外の何物でもないが、私は昔からエッセイストに憧れていた。
正直を言えば「なりたかった」。いや、ちがう、「なりたい」のだ。
「憧れ」という表現を用いるのは、夢を掴むための努力をしていないことへのうしろめたさがあるから。逃げの言葉だ。
仕事をしながら、いつだってこのことに悩んでいる。
転職も重ねたが、言い訳はいまも減らない。
ただ、ただ、焦る。その一方で、覚悟ができない。ああ、情けない・・・。

そんななかで出版された、同い年の女性が書いたこの本は、まぶしかった。
すさまじく興味を惹かれる一方で、読むことができない。

 

連休に入り、何のきっかけがあったわけでもなく「気持ちと時間に余裕があるし、そろそろ・・・」とふと思い立ち、やっと読むことができたのだった。
読みやすくうつくしい言葉と、ジェットコースターのように緩急に富んだエピソード展開。

それでいて、メッセージはじわじわとじっくり浸み込んでくる。
一気に読みふけり、読後の余韻がしばらくじーんと響いていた。

いろんなことを考えた。

 

 

特に心つかまれ、読み返してしまったのは「魂の速度」というエピソードだ。
スペイン版お遍路さん「カミーノ」の道は長い。
宿泊先選びは先着順とのことで、よりよい条件の宿に泊まるべく、小野さんは凄まじいペースでがむしゃらに歩いていく。
そんな彼女を見かねて、道中で出会ったセラピストがこう話す。

 

「どうせ、ゆっくり行っても、速く歩いても、辿り着くのは同じ場所なのよ。
急いだって何も見つからない。それどころか、大事なものを見落としてしまう可能性だってある。
でも、急いでいるうちは、絶対にそのことには気づかない」

 

読んでいて思い起こされたのは、数年前にのめりこんだ「婚活」のこと。
周囲がどんどん結婚をしていくなか、取り残される不安、焦る気持ちを振り払うように、毎週末、なんらかの活動をしていた。
活動をしていないと、心が落ち着かなかった。
街コン、お見合いパーティー、婚活バー、合コンセッティングサービス、結婚相談所、ありとあらゆるところに顔を出した。

おもしろいくらい、成果が出なかった。

 

我が家に2着しかないワンピースをここぞとばかりに着ていき、相談所のオバチャンに「そんな真っ黒のワンピースは、婚活で負ける!」とお叱りを受けて買った、白いワンピース。

洋服というより「装備」として着用して臨んだ。

この装備で攻撃力が上がったはずなのに、どの男性にも勝てなかった。

 

チクショー!20代は売り手市場って聞いていたのに!おっぱいがないからか!足が太いからか!顔がデカイからか!鼻毛が出てたのか!なんなのか!

お金も、時間も、体力も、“ワタシ20代女子”というプライドも、すべて使い果たした先で辿り着いたのは、


「何のために結婚したいんだっけ?」

 

という、ひどくシンプルな自問だった。

 

「嫁ぎ遅れの、結婚できないダメ女だと思われたくないから」

 

その発想が既に、ダメ女の証である。

婚活は戦場であり、男性を「倒すべき相手」として見ていた。

好きとか嫌いとか、尊敬、信頼、楽しさ、松田聖子先生が言うところの「ビビビ」すら、感じ取ろうとしていなかった。

 

(・・・アホくさ・・・)

気付いた瞬間、ブルドーザーで駆けずり回るような、半ば怒りにも似た、婚活に対するエネルギーの火が消え、活動は卒業に至った。

安心感を得るためにがむしゃらになって活動していたけれど、卒業してやっと、気持ちはやすらかになり、毎日に安心するようになった。皮肉なものである。


他者と比較し、第三者からの評価のことばかり気にしていると、本質を見失う。
見えないゴールテープに向かって全速力で走ることほど、虚しいことはない。
そしてそれは、婚活に限った話ではない。

 

 

■「生きる勇気が湧いてくる、強烈自伝エッセイ」

 

「本当は死ぬほど書く仕事がしたい。
編集者さんと互角に付き合える、著者の人が死ぬほどうらやましい。
自分の名前で本を書いている、イケてる人たちに心底、憧れる。
(中略)
そもそも自分にそれだけの実力があるなんて、とうてい思わない。
それに、もし挑戦して、それが叶わなかったら、私は一体、どうしよう。」

 

かつての小野さんの心の声は、私が長年持ち続け、いまも抱え込んでいる悩みだ。
彼女は自分自身の想いに向き合い、決心して「書く仕事」をはじめた。

その上での努力の末、やっと今、すばらしいエッセイ本を出版するに至ったのだ。

きっぱりケジメを決めて夢を諦めるでもなし、覚悟して夢をかなえる努力をするでもなし、ひたすら、同じ悩みを手のひらでこねくり回しているだけの私が、何が「悔しい」だ!
「同い年」「慶大卒」という小さな共通項を見つけただけで、比較してしまった浅ましさ。
そんな理由で3ヶ月も読めずにいた自分が、改めて情けなくなった。

 

「本当の望みなんて、叶うわけがない」

そういう、さわやかでない諦めを抱えながら、私はいつもくすぶっていた。

くすぶりながら、現実的な「第二志望」をジプシーして、でもいつも「どこか違う」と不満を言っていた。

「第二志望」なんだから、「どこか違う」のは、自明のことなのに。

 

あまりにも図星で、ぐさりと突き刺さる言葉。

でも、私はまだ覚悟が決められない。

23歳から働き始めて、社会人7年目。

働くことの責任感、キツさ、いろいろ、見えたものもある。

「エッセイを書く人になりたい」という小学生のころの私の夢は、「仕事」という沼に浸しても負けない強さを持っているのか、わからない。

この本を手にするまでずっと悩んでいたけれど、今はこの「わからない」を噛みしめることができる。

 

覚悟なんて、慌てて焦って決めるものじゃない。
それこそ、婚活の二の舞だ。大事なものは何なのか。私が本当に求めるものは何なのか。

それを見失って、焦燥感だけで走り始めても、虚しいだけだ。

 

「驚くのは、今の仕事の中に、一見、無駄だと思っていた、これまでの仕事の経験が、ちゃんと生きていることである。」

 

そんな小野さんの言葉にも救われる。

 

本の帯には「生きる勇気が湧いてくる、強烈自伝エッセイ」と書かれている。

「ご家族との関係も大変で、パニック障害になったり、就活で失敗してしまったり、とにかく大変な女の子がどうにか立ち直れたんだから、私もがんばれるはず。がんばらなきゃ」という読後感が待っているのだと思っていたが、てんで異なっていた。


ここに書かれているのは小野さん自身の体験談だ。

なのに、読者ひとりひとりの悩みに寄り添い、一緒に考えてくれているような、そんな錯覚を覚えてしまう。

 

就活に悩んでいる人、対人関係に悩んでいる人、とにかく生きていてモヤモヤすることがある人、それぞれに異なる何らかのヒントを与えてくれるに違いない。

(前述の一篇「魂の速度」の後半、集団面接の話は就活生必読!)

私は仕事に対する悩みについて、じっくり考えるひとときをもらうことができた。

 

「自信っていうのは、ある日突然湧き出るもんじゃないんだよ。溜めるものなんだ。」

 

就活中の小野さんに、見ず知らずのおじいさんが授けたアドバイスの言葉が、胸に沁みる。


3ヶ月間読めなかったこの本は、これから、繰り返し何度も読む本になるだろう。

確かに、生きる勇気が湧いてくる。本当に読んでよかった。

静かに心境の変化を手にしたゴールデンウィーク。こういう連休も悪くない。

 

 

今週のお題「ゴールデンウィーク2015」